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「私たちは今、旅立ちの、準備をしている。」

 

鷺浦で生まれ育った18歳の双子の少女リカとルカは、それまでの人生と同じように二人寄り添う様に、松江大橋の南詰にある小さな蔵を改造したカフェで働いている。

 

ある日オーナーの真理が、店を二人にあげると言ってさっさと海外へ行ってしまった。

 

「いつかあんな店、二人でやってみたいって言っとったがん」と母・由美も取り合わない。

 

二人きりでお店を始めたその日、ルカはさっそく珈琲の淹れ方を間違えてしまう。

 

自信も無く心細い二人に手を差し伸べたのは、この店で昔バイトをしていた健太だった。一から丁寧に珈琲の淹れ方を教える健太。

 

ある日、偶然古いカメラとギターを見つけたルカ。何となくギターを手に取るリカと、残った古臭いポラロイドカメラを珍しげに見ているルカ。

 

ルカが早速手に入れた色合いの悪いフィルムを使い写真を撮ってみると、それは今まで見慣れたものとはほんの少し違う風景が写し出されていた。

 

リカがギターを触っていると、中から古いメモが見つかり、「ミャージック」という聞き覚えの無い唄の歌詞とコードが書かれていた。

 

どんどん写真の魅力にのめり込んで行くルカと、「ミャージック」に惹きつけられ、ギターを弾き始めるリカ。

 

一方、10年前の二人の父親の海難事故以来、母親の由美、少しボケてしまった祖父、そして父の幼馴染で二人にとっては父親のような存在の直蔵、直蔵の弟で知恵遅れの秋夫。小さな漁村で暮らしている大人たちは、あの時からこの街ごと時間が止まってしまったかのように生きていた。

 

いつも一緒だった二人が、カメラとギターそれぞれを選んだ時、それは二人の人生が別々の道を歩みだす第一歩だった。

 

写真や音楽、そしてお店を通して出会う人々によって、二人は同じ景色を違う色彩で感じ始めていた。

 

いつしか、言葉にしなくても解り合えたテレパシーが通じなくなり、二人は、別れの予感を感じ始めていた。

 

それは二人の成長を見届けた大人たちにとっても、次の一歩を歩みだす時だった。

 

そして、秋夫が起こした小さな出来事によって、大人たちの時間も再び動き出す事となる。

 

音楽、写真、旅、出逢い、別れ、語り継ぐ事、過去、現在、そして未来。

 

社会に出会う者、世界に触れる者、遠く旅立つ者、ここに残る者。

 

この世界はまるで違う万華鏡のように様々なビーズが絡まりあって光を放ち、きらきらと輝いている。

 

春まであと僅か、いつも一緒だった二人はそれぞれの役割を確認し合うように、自分の道を歩み始める為に今、旅立ちの準備をしている。

 

 

 

 

 

 

 

© 「リカとルカ」製作委員会 ETHNOSエトノス

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